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市民大会当日。 陸の卒業式も終わり、桜は咲いた。競技場がある市民公園を満開のソメイヨシノの花がおおった。 「若者も花ざかり、いいですねぇ」 衛はスタンドの上段からカメラをかまえる。 選手の荷物番もする衛は、動いて前方で撮影することはできない。よって、高性能の望遠レンズも欠かせない。 一般男子のマイルがスタートするまで、昴と桜を写す。 いつもの試合のピリつく感じはなく、昴の顔にも緊張は見えない。花見客がフェンス越しに観戦しているからか、児童から大人までいるからか。大きな運動会のような雰囲気がただよってくる。 昴が8レーンへ動いた。 トラックは一周400m。つまり、4×400mはゴールとスタートが同じ位置になる。そして、曲線があることで、外側のレーンのスタートラインは前へ置かれ、8レーンは先頭にいるかのように見える。 1から8レーンに入った選手たちはスターティングブロックの調整を終えると、クラウチングスタートの態勢になり、静止した。 合図とともに腰があがり、号砲が鳴った。 歓声が渦巻く。 昴は先頭をたもったまま、第2コーナー、バックストレート、第3、4と走り抜けた。 トップで大へとバトンは順調に引き継がれた。 大には児童からの声援がかかる。トレーニングの成果か、大もぎりぎり首位をキープして駆けた。 続く健へのバトンパスもスムーズに進んだ。 健は一人抜かれたが、くらいついていく。 バトンはアンカー陸へと確実に渡った。 陸は先頭のランナーをとらえ続けた。最後の直線で力を絞りだす。前を行く選手も速度をあげ、デッドヒートに。 わずかに、陸が前に出てゴールした。 陸に昴、大、健が駆けよる。 散らばっていた部員たちは一つになった。 桜が舞った。まるで彼らを祝福するかのように。 ファインダー越しに眺めていた衛は、優勝した青年達の笑顔を写真に収め、満足してほほえんだ。
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