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4-2
市民大会当日。
陸の卒業式も終わり、桜は咲いた。競技場がある市民公園を満開のソメイヨシノの花がおおった。
「若者も花ざかり、いいですねぇ」
衛はスタンドの上段からカメラをかまえる。
選手の荷物番もする衛は、動いて前方で撮影することはできない。よって、高性能の望遠レンズも欠かせない。
一般男子のマイルがスタートするまで、昴と桜を写す。
いつもの試合のピリつく感じはなく、昴の顔にも緊張は見えない。花見客がフェンス越しに観戦しているからか、児童から大人までいるからか。大きな運動会のような雰囲気がただよってくる。
昴が8レーンへ動いた。
トラックは一周400m。つまり、4×400mはゴールとスタートが同じ位置になる。そして、曲線があることで、外側のレーンのスタートラインは前へ置かれ、8レーンは先頭にいるかのように見える。
1から8レーンに入った選手たちはスターティングブロックの調整を終えると、クラウチングスタートの態勢になり、静止した。
合図とともに腰があがり、号砲が鳴った。
歓声が渦巻く。
昴は先頭をたもったまま、第2コーナー、バックストレート、第3、4と走り抜けた。
トップで大へとバトンは順調に引き継がれた。
大には児童からの声援がかかる。トレーニングの成果か、大もぎりぎり首位をキープして駆けた。
続く健へのバトンパスもスムーズに進んだ。
健は一人抜かれたが、くらいついていく。
バトンはアンカー陸へと確実に渡った。
陸は先頭のランナーをとらえ続けた。最後の直線で力を絞りだす。前を行く選手も速度をあげ、デッドヒートに。
わずかに、陸が前に出てゴールした。
陸に昴、大、健が駆けよる。
散らばっていた部員たちは一つになった。
桜が舞った。まるで彼らを祝福するかのように。
ファインダー越しに眺めていた衛は、優勝した青年達の笑顔を写真に収め、満足してほほえんだ。
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