双子の修道士 ジュメッリ兄弟 

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 第一回    見習い修道士アルディのある日  え? 何ですか? 聖遺物が盗まれたんですか? っていうかそれって盗まれたって言うのですか? だってほら元々はこっちが盗って来た物じゃないですか。 え? 人聴きが悪い。ちょっと拝借しているだけ、ですか。物は言いようですね。それで副院長は何と言っているのですか?取り戻して来い、ですか。それは無理ではないですか。だって元々うちの物ではないのですから。ヴィグルー修道士もそう思われたのですね。取り返すのは無理だって。  それで院長があることを思いついた。え?本当ですか? 院長の頭の中には金銭のことしかないんですかね。あ、失言です。サンクテュエール修道院のことを考えてらっしゃる、ということですね。これもまた物は言いようですね。  それで副院長は院長の案を受け入れた、というわけですか。本気なんですか? 本当にそんなことをしていいのでしょうか。よくない。ですよねぇ。だけど仕方ない、ですか。まぁ、それもそうかもしれませんが……。  で、僕に協力しろと。無茶を言いますね。他ならぬヴィグルー修道士の頼みですから手伝いはしますが、で、いつするのです。え、今から? もうじきヴェスパー(夕べの祈り)ですよ。それでは急ぎませんと。  この川ってロワール川ですか。ローヌ川はリヨンの方に流れている。そうですか。川向うはオルレアンですか。ここがツールならそうですよね。 セーヌ川に近いのがフレチニーでしたか。  ところでヴィグルー修道士は<陶工の畑>の件をどうお考えですか? ああ。荘園主が寄付したいってことだから別にいいじゃないかって。そういうものですか。まあこのブラザーたちは腹が満たされたらそれで充分って感じではありますけど。僕もそうですし。同感ですか、よかった。人間、食べないと生きていけませんからね。
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