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私は化粧っ気のない顔に、手を当て小さくハァーっと、ため息を吐く。
(だよね…… わかってるんだけど、二人の怪獣相手に手一杯で…… )
言い訳をして誤魔化す。
(帰りに薬局でリップとアイライナーでも買う? イヤイヤ、化粧品買うお金があったら、双子の好きなボーロが何個買える? )
どうせ使わず、端子の肥やしになるだけなら勿体ない、とオシャレとはやはり縁遠い。
我ながら貧乏くさいし、皆んなが噂する通り、女を捨ててると思うが、つい、自分の事は後回しになってしまう。
いくら薬局で安く買えると言っても、一馬力の母子家庭には、無駄なお金など1円たりともない。
「女としての賞味期限、切れてるなこれ…… 」
ふふふっ……と、自嘲しつつ、自分に言い聞かせる。
(出かける用事もないし、化粧品なんて要らない、要らない)
私の育った施設では、欲しい物が手に入らないのは、当たり前の事だった。
(服は、基本、上の子からの、お下がりだった。 皆んな両親が毎月会いに来るから、新しい服買って貰ったって言って、色々回してくれたんだよね。 可愛い服沢山あって、今よりオシャレだった気がするわ)
一花本人は気が付いていないが、子供達が産まれる前も、産まれてからも、自分の為の贅沢は、直ぐに諦めると言う癖が、抜けない。
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