婚約者

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 隔離病棟だと言うのに、どうやって出いりしているのかわからないが、およそこの場にそぐわない格好をしている。  形の良いバストが強調される、ピッタリとした服を着こなして、敵意を剥き出しにしていた。 「ふーん…… しぶといわね。 あなた…… まだこの病棟に居たのね」 「アイシャさん…… 」  花瓶が割れ、水を被って濡れた衣服がどんどん冷えてきて、ブルッと身震いする。 「まあ、自己紹介してないのに、名前を知ってるって事は、彼らから私の事、聞いてるのかしら」  フフンッと、勝ち気な顔で笑う。 「…… 婚約者だとお聞きしました」  アイシャは、吊り目がちなアーモンドアイを大きく見開いて、胸に手をあてた。 「そう、そうなの? 婚約者って聞いたのね。 フフフッ…… どっちから? カミール? それともアミール? もしかして二人からかしら? 」  頬をピンクに染め、キラキラとした笑みを顔一杯に現し、美形な顔を更に輝かせる。 「そうね…… 」  呟いて、トンッと、人差し指を私の額に当てる。 「第一夫人になったら、スペアとして、あなたを第二夫人に置いてあげても良いわよ。 私だって、そんなに心が狭い訳じゃないんだから」  グイッと額を強く押されて、フッと不敵な笑みを浮かべると、ウキウキと軽やかな足取りで、二人の病室へ入って行った。  子供の頃から容赦なく向けられていた、バカにして下げずむ様な態度。  無垢な子供の嫌がらせとは違い、女の嫉妬混ざりのドロドロとした感情を、あからさまにぶつけられて、戸惑いが湧き上がって来た。
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