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「まず私は、時間が遅すぎると思いました。少女が出歩くには遅すぎます。
死亡推定時刻は十九時から六時。五月ならまだ、十九時は暗い時間です。つまりは、貴久子様は十九時以降までどこかに隠されていたのでしょう。
そうして、瀬戸ビルディングの前はそれなりに人通りがありますから、無理矢理少女の腕を掴んで建物に引っ張り込むなど難しいでしょう。
貴女が誘ったとしても、断ったと思われます。貴女の敵意むき出しの態度では、誰であろうと誘いを受けるとは思われませんからね。
では、どうやって建物に招き入れたか。
推測ですが、道端でうずくまっている人がいたら、優しい心の持ち主でしたようですから、心配して家まで付き添ってくれるのではないかと思われます。
体調の悪い振りをして、あのビルディングの管理をしています。と、見知らぬ少女を騙す男がいたのではないかと……。
ところで夫人、どうして私が新城氏に本日伺う旨を伝えたか、理由をご存じですか?」
突然話が変わった為か礼子は夢から覚めたような表情で、いいえ。と、素直に答えた。
「そうですか。つまりあの手紙は、新城氏の元に届いたということですね。
それでは話を戻します」
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