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隼人の右手が、隆彦に伸びようとしているのを見て、圭は遮った。
「落ち着いて下さい。その男は長瀬さんが手を下すだけの価値もありません」
不満を見せながらも、隼人は手を引いた。
「認めるのですね。青井貴久子様に危害を加え、命を奪い、それらを隠すために瀬戸ビルディングの屋上から突き落としたこと……」
圭を睨み付けていた目が、恐怖にとって代わった。息が小刻みになったかと思うと手を口にあてがい、突然嘔吐した。
人は、心理的負担が重くなると嘔吐の症状が現れることもある。
ふと、礼子の言葉が甦った。
(あの女がどれほど白梅の君に相応しくなかったかは、死に方に現れておりましたわ。罰が当たったのです。あの女には罰が……)
「まさか、生きていたのでは……」
礼子が笑い出した。楽しくて堪らないとばかりに……。
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