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「私から白梅の君を奪おうとしました。死に値する罪ですわ」
「さっきから圭ちゃんが言ってるだろうが。麻上美沙子はあんたのもんじゃない」
「無礼な呼び方をしないで!
本当に、男ってどうしてこうも配慮ができないのかしら。白梅の君はお前が軽々しく口にできる方ではありません」
「その呼び方にもあんたの屈折具合が表れてるよな。
あんたは麻上って言いたかないんだろ? 先代の麻上男爵も、あんたから戸川美沙子を奪った。
さすがに男爵に手を出すわけにゃいかんから、我慢してただろうけどな。
戸川美沙子が麻上美沙子になり、妻になり、母になってるのにあんたはいつまでも、少女のままの白梅の君を求めた。それがどれほど相手を苦しめるかを理解しないままな」
「おだまり!!
誰の妻になろうと母になろうと、白梅の君の美しさは、無垢な可憐さは失われはしませんでした。
私は誰よりもあの方を愛しておりましたわ。
結婚など、家同士の思惑で行われること。白梅の君も嫁がざるを得なかっただけで……」
「違いますよ」
圭は静かに否定した。
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