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「母は幼い頃から、父に恋心を抱いておりました。それに気付いたからこそ、祖父は父の元に嫁がせようと考えたのでしょう。愛する娘の幸せを願って。
女学校時代から、亡くなる直前までの母の日記を読みました。母の父に対する、父の母に対する愛情に溢れています」
「違います、白梅の君は……」
「いい加減現実をご覧になっては如何ですか? 私には貴方がとても惨めで、憐れに見えます」
礼子の頬が、一つの生き物のように動いているのが確認できる。怒りの為だろうか。
床に座り込んで、自らの嘔吐物で手を汚した隆彦は、ぶるぶる震えながら涙を零し続けている。
惨めな姿を見るのは辛かった。
噂では、礼子に恐れを成した隆彦は、女が恐ろしくなり、少年に走ったと言われていたが、真実は、自分が殺した少女の断末魔の叫びにも似た、助けを求める姿に脅えていたのだ。
それでも、偽りとは言え、恋愛の対象として、女性的特徴を残す中性的な少年を求めたことに、呆れるしかなかった。
「新城氏には辛いでしょうが、もう一つの殺人事件に関しても追及させて頂きます」
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