恐怖

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 「ハンカチは探したでしょうが、見つからなかった。それもそのはず、管理人が身に着けていたのですから。  見つかったとしても、それが貴久子様の物だと誰に分かるものかと、自分を慰めていたのでしょう。  しかし、十年以上経ってから、再び同じ手巾が現れた。それも、自分を犯罪者にした元凶である人物が見せつけるようにして。  恐怖したでしょうが、うっかり手を出そうものならもっと恐ろしいことになる。  幸い、母からの脅迫は無かったので安心したことでしょう。  けれど今度はその息子が、態々見せつけて来た。悪意を感じ、先手を打った。  少年に私を襲わせましたよね。まぁ、失敗しましたけれど。  その後、私が押しかけて来るのを利用し、奥まった部屋に通し、危害を加えるつもりだったのではありませんか?  貴方にはもう、逃げ道はありません。反省して下さい。そうして、反省を行動に変えて下さい」  隆彦は泣きながら、一度だけ頷いた。
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