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『お母様、何を探しておいでなのです?』
今は自室の本棚から本を引っ張り出している美沙子に、圭は声を掛けた。
『うるさくしてごめんなさいね。日記を探しているの。女学校時代の日記』
美沙子は一つ溜息を吐くと、視線を畳に落とした。
『後悔しておりますの。どうして真相究明せずに絶交だけで済ましてしまったのかと。
こんなに早く死が訪れるとは思いもよりませんでしたし……。もう、上がらねばなりませんのに、未練が残って決心がつきません』
『お母様、私が解決させますから、どうか安心して極楽へお出で下さい。いつまでもこの世に留まるのは良いことではありません』
でも……。と、美沙子は不安気に目を伏せる。
『ご安心下さい。私は一人ではありません。長瀬さんがきっと、協力下さいます。あの方は名探偵なのですよ』
美沙子はようやく顔を上げた。
『そうですわね。あの方は貴方を助けて下さったばかりか、いつも傍で守って下さる方。感謝してもしきれませんわ』
『お母様、ですから教えて下さい。お母様の心残りは一体なんなのでしょうか?』
では、と、美沙子は立ち上がった。
『日記を探さなければ。見付けたら貴方の所に届けます』
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