2/2
前へ
/228ページ
次へ
 『お母様、何を探しておいでなのです?』  今は自室の本棚から本を引っ張り出している美沙子に、圭は声を掛けた。 『うるさくしてごめんなさいね。日記を探しているの。女学校時代の日記』  美沙子は一つ溜息を吐くと、視線を畳に落とした。 『後悔しておりますの。どうして真相究明せずに絶交だけで済ましてしまったのかと。  こんなに早く死が訪れるとは思いもよりませんでしたし……。もう、上がらねばなりませんのに、未練が残って決心がつきません』 『お母様、私が解決させますから、どうか安心して極楽へお出で下さい。いつまでもこの世に留まるのは良いことではありません』  でも……。と、美沙子は不安気に目を伏せる。 『ご安心下さい。私は一人ではありません。長瀬さんがきっと、協力下さいます。あの方は名探偵なのですよ』  美沙子はようやく顔を上げた。 『そうですわね。あの方は貴方を助けて下さったばかりか、いつも傍で守って下さる方。感謝してもしきれませんわ』 『お母様、ですから教えて下さい。お母様の心残りは一体なんなのでしょうか?』  では、と、美沙子は立ち上がった。 『日記を探さなければ。見付けたら貴方の所に届けます』
/228ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加