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三人は屋敷を出た。
これ以上はどうしようもない。隆彦が罪を認め、警察で事情を話すならともかく、物的証拠もない状況では再捜査も要求はできまい。
玄関の大きな扉を出た瞬間、銃声が轟いた。
無言のまま三人は二階を見上げた。屋敷の中がざわめき始めたのを感じる。
「一発ですね……」
どんな状況なのかを考える。礼子か、隆彦か。或いは自死か、殺人か……。
扉が開いた。知惠が、神妙な顔で立っている。
「男か? 女か?」
勇一郎が簡潔に質問する。
「男」
やはり。と思う。男の方が案外脆いものだ。
「卑怯者……罪を償いもせず逃げたのですね……」
圭の言葉に、知惠が視線を向け、心配そうに眼を細めた。
「どうしたの?」
圭に向かい、自分の首と頬に手を当て、知惠は心配そうに問う。
「ちょっと……大したことありません。心配かけて申し訳ありません」
「謝られることじゃ……」
「知惠ちゃんだっけ? これからどうすんだ?」
大きな溜息を吐く。白い息が微かに見えた。
「ここも潮時だね」
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