37人が本棚に入れています
本棚に追加
事件解決から二日、長瀬隼人と麻上圭の二人は束の間の平和を楽しんでいた。
忙しくしている間はどうしてもないがしろになってしまう事務所の掃除を終わらせると、昼食を兼ねたお八つとして、大福を頬張る。
育ちの良さというものは、ふとした時に出るものである。ただ大福を食べているだけにも関わらず、姿勢に、仕草に、圭の持つ品の良さが顔を覗かせる。
本来ならば、ここに居るべき人間ではない。男爵家の嫡男として、然るべき教育を受けているはずだった。
事故で父を失い、母を殺されるという不幸に立て続けに見舞われながらも、圭は強かった。我を失う事無く、正しく生きていた。
顎の辺りで切り揃えられた髪は墨のように真っ黒で、艶やかである。切れ長で涼しげな目、なだらかな鼻梁、薄く形の良い唇。
整いすぎて厭味なほどの美貌は、殆どの時間、無表情を貫いていた。
比べて、くせのある紅い髪、べっこう色の瞳。
鏡の中に映る隼人は、白人特有の特徴を持っていたが、肌の色は日本人そのものであった。
丈は六尺二寸と高い。
最初のコメントを投稿しよう!