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隼人は弁護士を辞めて今では、長瀬萬請負という何でも屋を始めたのだが、ある事件に巻き込まれて解決させた為、世間からは探偵と認識されている。
何度目かの溜息を、圭がついた。なにやら気にしている事がある様子だ。
どうしたのか問うてみようかと思ったその時、外に車が停まった。見覚えのある車である。案の定車からは父の紀夫が顔を出した。
慌てた様子の紀夫は、隼人が扉を開くと、挨拶よりも先に一枚の紙を渡した。
「どうしたの?」
紙は、音楽会の招待状だった。西洋音楽の小曲が五曲ほど記されている。
「実は新城礼子夫人から招待を受けていたのだが、取引先に不幸があってね、今から行かなきゃならない。
申し訳ないが代わりに頼めないだろうか」
言い終わると同時に、やぁ。と、圭に向かって手を上げる。
「良いけど、急がないといけないな」
圭は紀夫に挨拶すると、招待状を覗き込んだ。
「私の好きな曲ばかり」
「じゃあ丁度良い、一緒に行って、隼人が眠りそうになったら、起こしてやってくれないだろうか」
否定しようとして止めた。眠らずにいる自信がなかったのだ。
「良いのですか?」
圭はどうやら乗り気らしかった。
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