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新城礼子は有名人だ。
新城百貨店の社長夫人であり、大輪の赤バラを思わせる美貌と、堂々たる存在感で、社交界の華でもある。
しかし、なによりも彼女を有名人にしている理由は、美しい取り巻きであった。
常に礼子の傍には、少女が三四人存在した。大抵が、十七八才の似通った雰囲気を持つ美少女。
噂では、年頃の娘を持つ親は、軽薄な男よりもこの、権力と財力を持つ魅力的な婦人を警戒しているらしい。
気に入った娘を取り巻きにすると、散々ぜいたくを教え込み、興味を失うとあっさりと捨ててしまう。後に残ったのはぜいたくを憶えたわがまま娘。
嫁のもらい手が見つかろうはずもなく、金銭感覚の矯正に苦労するのだとか。
隼人と圭は、こてを当ててあった背広を着込むと、髪を整える暇も無く家を飛び出した。
その為、常ならば男物と一目でわかる暗い色の三つ揃えを身に着ける圭が、中性的な雰囲気の、ボレロなる丈の短い背広を身に着ける羽目に陥った。
本人はやや不満そうであるが、音楽の魅力には抗いがたいのだろう、文句も言わずに着込むと、車に飛び乗った。
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