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何も答えなかった。出てくる嫌味に苛立つことすらしない。
そんな私を見て、美咲が笑った。
「そんなにショックだった? 泣くくらい? 彼、今は私の部屋で寝てるよー。婚約者なら怒鳴り込むぐらいのことすれば? 普通するよ、なんで黙って帰ってきたの? まあ、あんたはそうするだろうなーって思ってたけど。
前も同じだったね。私が名無しの彼と付き合った時も、怒ることすらせずに黙ってた。気持ち悪い」
「……何、しにきたの」
「早く別れてよ」
冷たい声が響いた。私は何もいえない。
「初めから思ってたけど、名無しには勿体無い物件だから。別れたくないとか言ってたみたいだけど、もう自覚したでしょ? あんたたちは上手くいかない」
「……それ、は」
「私もね、最初は寛人さんに聞いたの。名無しの境遇も教えてあげて、二人で逃げてって。そこで彼が分かった、って決意したら二人の仲に入ろうなんて思わなかったよ?
でもすごーく困ってたよ。愛されてないんじゃない?」
「言ったの? うちの家庭のこと」
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