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エピローグ
その次の日、戦争が終わり、孤児院が次々に誕生した。
モモも、新しくできた動物の保護施設に引き取られた。
イヌシシ狩りは禁止され、モモはやっと堂々と外に出られるようになった。
あの路地裏にいたアメリアは、大人たちによって発見された。
だが、どんな医者もアメリアを救うことはできなかった。
アメリアは、こんな文章を残していた。
〈やってほしいことリスト
・子供のイヌシシを狩らないでほしい
・子供のイヌシシを保護してほしい
・わたしが死んだらあの森のモモの木の下に埋めてほしい〉
大人たちは、せめてもの罪滅しにと、アメリアの望んだ通りにしたのだ。
そして、アメリアは、自分のことよりもモモのことを先に書いていたのだ。
この近くの森は、あの森しかないので、大人たちはこの森だと信じてアメリアを埋めた。
――しばらくして、モモは、あの森に行ってみた。
あのモモの木の切り株からは、小さな小さな芽が出ていた。
――きれいだな。
モモはふっとそう思った。
――そして、いつしかアメリアが話していた、このモモの木の話を思い出す。
――『あのね、モモ。このモモの木はね、もう1000歳になるの。1000年前からずっとこの場所で、永遠に近いような時間を刻んでいるの』――
帰ろうと背を向けて走り出すが、もう一度モモはふり返った。
そこに――アメリアの笑顔があるような気がして。
ああ、あの小さな小さな芽は、これから、1000年の時を、アメリアとともに刻むのだろう。
春の暖かな日差しが、モモを優しく包み込んだ。
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