エラ

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エラ

 この森に、人がやってくると、アメリアは必ず気がつく。  今日も、森に侵入者が来たことにいち早く気づいた。  あわててモモを木の陰に押し込む。  イヌシシがいることがバレてしまえば、この森に猟師が入る。  そうなると、アメリアたちの居場所のこの森が、奪われてしまう。  モモも慣れてきたようで、素直に木の陰に隠れた。 「――ねえ、あんた、何者?」  は、遠慮なくアメリアに話しかける。  1人でこんな格好で森の中にいるのだ。『何者?』居場所をなくした孤児に決まっているだろう。  あいつ――エラは、この国の王の一人娘で、王はエラを溺愛している。  それで、エラは、『自慢たらしい』、『傲慢不遜』な、可愛げのない娘だといつも言われている。  薄い水色のドレスには、所々金色の糸で花の刺繍がしてあり、どう見ても森に行く格好というより、王宮の舞踏会に行く格好だ。 「何者って言ってんの……答えられないの? まさか孤児とか?」  エラはくすくすと笑い始める。  この女は、アメリアと年は変わらない。それなのに、なぜこんなに威張っているのだろう。  孤児で何が悪いのだ。王族の人間が救いの手を差し伸べないからこうなっているのだろう。  ――孤児たちは精一杯生きている。  それに比べて、王族の人間は、何の努力もせずに、不満ばかり言いながら、今日ものうのうと生きている。  ――国に命じられ、今も命からがら戦っている者がいることも、戦争で親も居場所もなくし、路地裏や森のなかで、時に盗みを働きながらやっと生きていっている者がいることも知らずに。
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