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「――孤児だけど、それがどうかしたの?」
エラは目を見開く。そして、ふんっと鼻で笑った。
「認めるのね? 弱者の証拠だわ。弱いやつほど、自分が弱いことを自覚して、威張るのよ」
そっくりそのまま返したい。それに、孤児は弱いなんて誰が決めたのだ。
「――汚らしいあんたたちなんか、消えたほうがましよ」
アメリアは、すぐに言い返そうとした。だが、言葉が出てこない。
それにつけこんで、エラは追い打ちをかける。
「何も言えないのね? それは消えたほうがいいと認めているっていうことよ? ……あら、さっきまであんなに威張っていたのに、どうしたの?」
何度でも言おう。威張っているのはエラだ。アメリアはちっとも威張っていない。
エラはさっさと帰り始めた――と思いきや、くるりとこちらを向く。
「父は、孤児たちにもお金を納めるように義務付けるそうよ? でも、父は慈悲深いから、ふつうより少ない金額でいいらしいわ。本当に、父は優しいわ。汚らしいあんたたちに、救いの手を差し伸べるのだから」
救いの手を差し伸べるのだったら、孤児にお金を納めるように言うことはないだろう。
王は慈悲深い? そんな話を聞いたことがない。聞いたことがある王の噂と言えば、『エラの気に障る者は、罪を被せて処刑する』というものだけだ。
そして、エラは、今度こそ帰り始めた。
アメリアは、ぐっと奥歯を噛みしめた。
――確かにそうかも知れない……ただ一匹の動物に救われたように感じて。大したこともできないくせに、『私が守る』なんて言って。このイヌシシを王属に差し出せば、一生遊んで暮らせるだけのお金がもらえたかもしれないのに……
モモは、そんなアメリアに、何も言えなかった。
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