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「…なんかすごい悪いことしてる感じです」
「気が小せぇんだよ、お前は」
「でも、確かになんだか楽しい気がします」
「だろ?」
にこにこと楽しそうに笑う菫は喉が渇いていたのだろう、グラスに入ったボジョレーを勢いよく喉に流し込んだかと思えば、すぐに渋い顔をするからウケた。
「…赤ワイン、苦手なんでした」
「まじで頭悪いな、ちょっと待ってろ」
仕方がないのでキッチンからグラスと水と良い具合に冷えたアイスワインを取り出した俺は、テーブルの上に置きっぱなしだった菫の携帯が震えたのに気付いた。
なんか鳴ってたぞ、とそれを菫に投げ渡してからベッドの上に腰を降ろす。菫は今日の撮影が一緒だった人から写真が送られてきたと言って、また画面を見せてきた。
「今日は春物の撮影で原宿に行ったんです」
「もう来年の春の話かよ」
「気が早いと思いますけど、結構そういうものならしいですよ、この業界は」
ふぅん、と適当な相槌を打つ。
爽やかな酸味のワインが口に合って美味い。
今は秋が終わりかけているところだというのに春らしい淡い色の服を着た美人ばかり、写真の中には並んでいる。俺には馴染みのない華やかな世界をぼんやり眺めていると。
「あっ」
わかりやすい声を上げて菫が携帯を引っ込める。
俺はそれに思わず苦笑した。
仕事仲間から送られてきた写真を次々にスライドしていると、菫が知らない男と手を繋いでいる写真が出てきたのだ。
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