一、何でも屋

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 破壊され尽くした都市。いや、元都市、と言った方がしっくりくるだろう。瓦礫が散乱し、かつての文明の象徴だった高層ビルは見る影もなく無残に朽ち果てている。その光景は、管理するものがいなくなって相当の年月が過ぎたことを物語っていた。  そんな元都市部を少し離れると、緑が広がっている。こちらはかつて、人類と呼ばれる生き物が農地として使っていた土地だ。しかし今、その土地には風で運ばれてきた種子が芽吹き、こちらも管理はされていない手つかずの自然と成り果てている。  人類と呼ばれていた生き物が自滅し、どれだけの年月が経っただろうか。  瓦礫と化した元都市部の一画に住み着いている二匹の猫がいた。一匹は黒猫で、黄色い瞳が鋭く光っている。彼の名はクロッシュ。口数は少ないが、同類思いの猫である。  そんなクロッシュの傍で身体を伸ばし、ひなたぼっこをしているのが、三毛猫のピエールだ。彼はガラクタ集めを趣味としており、ピエールとクロッシュの住み処であるこの周辺には異様に物が集まっている。 「こんにちは」  そんな二匹の元へ、一匹の綺麗な白いメス猫がやってきた。クロッシュはのろのろと身体を起こすと、やって来た白猫に目をやる。鋭い彼の視線を受けた白猫は、少したじろいでいた。 「どうしましたか」
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