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その建物はまるで城のようだった。
内装は黒や紫が多く不穏な空気が漂っている。
「……我らの目的は二つの世界の融合。これまでは問題もなく行うことが出来ましたが……最近、とある問題が出てきてしまいましたね」
廊下を歩きながら一冊の本を持った男性が独り言を言っていた。
「炎響、か」
独り言に答えるように若い青年が柱の影から言った。
「私の独り言に答えるのはよしてください、ゴウカさん」
「お前の独り言は独り言じゃない。こっちにも聞こえる」
柱を挟んで二人は睨みつけているようだった。
「二人とも、喧嘩してたらあの人に怒られるわよ?」
「ナギさん……」
二人を止めるように入ってきたのは濃い紫色のワンピースで身を包んだ女性だった。
「ライコウ、あんたもその癖、早く治した方がいいからね? とにかく炎響は私たちにとって危険な存在。今まで私たちが送ったディビターがどれだけやられたか承知でしょう?」
「それはもちろん。おっと、私はもう行かなければ。それでは」
ライコウは他の二人の方に一礼をしてからスタスタと歩いていった。
「ゴウカ、あなたは炎響のこと、どう思ってる?」
ナギはふとゴウカに尋ねた。
「別に脅威とは思わない。俺たちが送り付けたのはあくまで最下層のディビター。そいつらが山のように消されても俺たちには届かないだろうな」
柱の影から焦りを感じない声を聞いたナギはちょっとしたため息をついた。
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