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「ふー! ふー!」
くそっ、頼む外れてくれ!
俺は鼻息を荒くしながら最後の力を振り絞り、縄をほどこうとした。
しかし縄はびくともしない。
それどころか余計しまったような気がする。
「苦しい? 苦しいよね…………ごめんね? でも安心して、つらいのは今だけだから。 すぐに楽になるよ」
「ぎぃっ!?」
更に締まる首から漏れ出る自分の物とは思えない苦痛の声。
その声を聞いた女の口元がニヤリと歪む。
すると直後、外からサイレンが響いてきた。
この音は警察か……?
警察…………?
そうだ、警察だ。
助けを呼ばないと…………。
「た、助けて……」
俺はか細い声で助けを乞う。
しかしそれが彼女の怒りを触発することになる。
「た、助けさせるわけ無いでしょ!? だって君は私の物だもの! もう誰にも渡さない! 渡すもんかぁぁぁ!」
「────ッ! あ……ああああ!」
グシャッ。
何かが俺の右目を潰した。
残った左目で俺はそれを恐る恐る見ると、目に入ってきたのは…………血が滴る灰皿だった。
そうか、灰皿で俺の頭部を殴ったのか。
道理で異常な痛みを味わったはずだ。
「手に入らないなら殺してやる! 殺してやる! そして最後に私も一緒に死んでやる!」
更に何度も何度も振り下ろされる灰皿が、俺の腕、胴体、を潰していく。
だが俺は叫びはしない。
いや、叫ぶ必要がないのだ。
もう痛くはないから。
そう、俺は恐らくこのまま死ぬ。
彼女に殺されて。
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