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こんな最低な世界で
確かに俺は死ぬ間際に祈ったよ、生まれ変わるなら他の世界にしてくれよと。
だけどこんなのは望んでない。
何故記憶を保持したまま、俺は赤ん坊になっているのだ。
中世的な世界で、ぼろ小屋で見知らぬおっさんに抱かれながら、ミルクを飲まねばならんのだ。
旨いけど。
「旨いか、ユキトよ。 絞りたてのミノタウロスのミルクだから、旨いだろう?」
「んぐんぐ……」
なんちゅうもんを飲ますんだ、クソジジイ。
その髭、引っ張るぞこら。
「そうか、旨いか。 そんなに急いで飲まなくても無くならないなら安心しろ」
悔しい!
すんごい旨いし、おっさんの腕の中安心感ヤバいんだけど。
もう幸せに包まれてるね。
ついでにおっさんこと『マクレイヤー』さん。
略してマークじいさんも幸せそうにしている。
「お前とわしだけならどれだけ幸せな事か……」
ああ、俺の母親や姉のことを言ってるのか。
まあ確かになんか当たり強いもんな。
俺も苦手だわ、じいちゃん。
と、ミルクを飲みながらそんな事を考えていた時だ。
突然扉がノックされたと思ったら、勢いよく開き、ドレスを纏ったウェーブのかかった髪の女が入ってきたのだ。
その女を見るなり俺はウゲッと顔を歪ませる。
そんな俺にマークじいさんは、シッと人差し指を置き……。
「おやおや、アルメイダ様何かご用でしょうか」
俺を揺りかごに戻すと、母アルメイダに問いかけた。
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