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「もうルエルちゃんったら! 油断しすぎ! めっ!」
「いや、カレリアも人の事言えないと思うが」
どっちもどっちだよ。
「ね、ねえユキトちゃん? 悪いのだけど今の話、内緒にしてくれないかしら? もしも貴族に知られたらルエルちゃんは……ね?」
「釘を刺さなくてもわかってるって。 誰にも言うつもりなんてないから安心してくれ。 つっても巷で噂になってるくらいだから、俺が口外しなくてもそのうちバレそうだけどな」
「ああ……だろうな。 その時はわたしが自分の手で始末を……」
そう呟いたルエルの瞳には、覚悟の色が滲んでいた。
それが何を意味しているかは想像するしかないが、力の限り握りしめている右手から推測するに、恐らくは────
「しゃーあくぅ」
「うおっ、なんだよフカヒレ。 お前鮫肌なんだから、あんまりすり寄ってくんなっての。 痛い」
まるで、出掛ける主人を引き留める飼い犬のように甘えるフカヒレを見ていたカレリアが、ボソッと。
「……もしかして、ユキトちゃんと一緒に行きたいのかしら」
「え? 俺と?」
「しゃーく!」
どうやらカレリアの言った通りらしい。
フカヒレが瞳をキラキラさせて、俺に期待の眼差しを送ってきている。
「そんなに一緒に行きたいのか? なら、一緒に行くか?」
「……!」
人間の言葉をある程度理解しているのか、フカヒレは喜んで俺の周りを周回し始めた。
サメが周囲を泳いでいると、なんだか海に潜っている気分になってくる。
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