姉と弟と泥棒猫と ──1──

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「んじゃ俺達はこれで…………行くぞ、フカヒレ」 「しゃー」  この世界の貞操観念は地球とは真逆。  男女間の常識が逆転しているのが当たり前の世界だ。  ゆえに地球の男と同じでアーベルジュの女の大半は、裸を見られても羞恥心を感じる事はあまりない。  とはいえ、やはり生肌を見るのには抵抗あった俺は、ルエルの引き留めてくる声をスルーして、そそくさとテントから退出。  夕陽が顔を出し始めた平原へと逃げ出した。  しかしそこで俺は、思いがけない人物と再会する事になる。 「ふぉっふぉっふぉ、相変わらず元気そうで安心したわい」 「え……? その声、もしかして……」 「久しぶりじゃのう、ユキトや。 元気にしとったか?」    そう、その人物とは、育ての親であり、血は繋がらずともかけがけのない大事な家族。  マークじいさんだったのである。 「じいさん!? な、なんでじいさんが王都に居るんだよ! どういうつもりなんだ、ツェリスカ! 王都が今危険なのは近衛のお前ならわかってるはずだろ! なのになんで!」  恐らくじいさんと共に来たと思われるツェリスカをキッと睨み、罵倒する。 「あー、それはそのぉなんていうか……」  いつもは反論ばかりしてくるツェリスカだが、今回ばかりは俺の剣幕にたじたじ。  視線を泳がすばかりでなかなか答えない。  その態度が余計火に油を注ぐ。
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