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その日のうちに灯里ちゃんと一緒に両親に報告するとお母さんははしゃいで灯里ちゃんのいるうちに赤飯を炊いて、タッパーに詰めて灯里ちゃんに持たせる。お父さんは記念に写真を撮ろう! と言って四人とちぃを加えて写真を撮った。両親のはしゃぎっぷりに嬉しさより恥ずかしさが勝ってしまう。灯里ちゃんはクスクスと笑っていた。いつになるか分からないけど、きっと僕らは家族になれる。そこにはちゃんとちぃもいる。恥ずかしさに耐えかねてちぃで顔を隠す僕に灯里ちゃんは、こう告げた。
「末永くよろしくお願いします」
その後、僕も灯里ちゃんの家に伺いご両親に挨拶をして、灯里ちゃんの家に遊びに行くことが多くなった。街にデートに行くこともある。行動範囲は広がったはずだが、灯里ちゃんはやっぱり僕の家に来たがる。
「やっぱりさ、ちぃと一緒にいる彰くんが一番可愛くて、彰くんと一緒にいるちぃが一番可愛いから」
ちぃとセットにされてしまったが悪くはない。僕から見てもちぃと一緒にいる灯里ちゃんが一番可愛い。
家族ぐるみのお付き合いは順調に年月を重ねる。同じ高校に通い、変わらぬようで確実に変化していく月日にちゃんとちぃはいる。二人で勉強をするときは、ノートの上に構ってと居座るちぃの相手をしながら。灯里ちゃんも加えた家族の食事時にやたら甘えてくるちぃをたしなめて。二人で出掛けるときは寂しそうに玄関先で鳴くちぃに留守番だよと言い含めて。高校卒業後の進路で灯里ちゃんと喧嘩したときもちぃは灯里ちゃんの腕の中にいた。
僕は灯里ちゃんと早く家庭を築くため就職をしたかった。灯里ちゃんは許さなかったのだ。進学をしたほうがいいと。大学なり専門学校なり進んで資格や技術を身に着けて就職したほうが良いと。
「いつまでも親の世話にはなっていられないよ……」
「バイトしながらでもいいでしょ! 人生を安売りしようとしないで! 家庭を築くってそんな簡単なことじゃない!」
「もう付き合って何年もたつんだよ!? 灯里ちゃんのご両親にも申し訳ないよ!」
「一生付き合うんだから急がなくていいの!」
お互いに言うだけ言い合って結局僕が折れた。はじめての大喧嘩だったが、ちぃは灯里ちゃんの腕の中で欠伸をするものだから、その緩さに僕と灯里ちゃんはつい笑ってしまう。
「喧嘩するときは、ちぃにいてもらうとすぐ仲直りできるね」
「そうだね。やっぱり彰くんと一緒にいるならちぃは欠かせないよ」
僕らは大学に進学し、卒業してから籍を入れた。就職したばかりで貯えのない僕らは式を挙げなかった。式はいつか可能になったら親しい人だけ呼んでやればいいと灯里ちゃんの提案もあったからだ。
ただ、お互いの家族とちぃを加えた記念写真は撮った。灯里ちゃんはどうしてもその写真にはちぃを入れたいと譲らなかった。反対する者はいなかった。
僕の両親は同居してもいいが、なるべく二人の時間を大切にしたほうがいいと狭いながらもペット可のアパートを探して来てくれた。
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