もうひと勝負と誤算

2/5
32人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
真鍋が外に出ると、板坂を捕らえた車が爆発し轟々と炎を上げているのが見えた。 車に向かうと、車の側で銀太達は立ち尽くしていた。 そして、2人の前に放電する物体が見える。 「どうしたのっ!? まさか、まだ板坂がっ!!?」 2人に駆け寄りる。 その途中で目に入る死体。 多分、使用人達だろう。ぱっと見で3人は地面に倒れていた。 男女の区別が付かなかった。 完全に炭化し、炭になっていた。 使用人達は爆発音を聞いて出て来て、あれが板坂なら、殺されたのだろう。 2人の真後ろまで来ると、やはり放電していたのはさっきまで、死に掛けていたであろう板坂だった。 ……しかも、今までより巨大だ。 「まさか……。どうして?」 「あれや?」と士鶴の声の指す方向を、真鍋は見た。 「え?」 真鍋は板坂の下に誰か居るのが分かった。 そしてそれが、誰だか気付く。 「お前は……っ!? 相馬……。相馬小次郎っ!?」 各地の将門塚(りょうもんつか)の封印を解き、将門の識を呼び覚ましている相馬がそこに居た。 「相馬? そいつはお前の仲間か?」 銀太がそう訊いた。 「いや。仲間という訳では無い。だが、俺が作った。そして、また今、力を与えた」 相馬の頭上で、話を聞いていた板坂が口を挟む。 「そうか! あんたが、俺に力を与えてくれたのか!? いいぜ! 此奴らを皆殺しにすりゃ良いんだろ? やってやるよ! 今までより、ずっと力が漲ってるぜ! 一瞬で3人とも片付けられるが、あの姉ちゃんだけは……、殺すのは楽しんでからだっ! ひゃっはー!!」 そう弾けるような笑顔で、嬉しそうに言った。 だが相馬は——、 「……いや。それはいい」 そう断った。 「え? じゃあ、俺は何をすれば良いんだよ? さっき負けそうになったから、がっかりさせたか? 今なら、こいつらにも負けねえぜ?」 板坂はてっきり復讐出来ると思っていたから、少し困惑した。 相馬は困惑している板坂に言う。 「ああ、そうだろうな。前より多くの識を送り込んだからな? 前よりか数段強くなってる。——そんなお前をだ。俺が此処で瞬殺して見せるつもりだ。復活してそうそう悪いが、殺す」 「えっ!?」 板坂は想像も付かない、相馬の提案に驚く。 「厳密に言えば、お前はもう生物では無いから、殺すというより単に消滅させるだけだがな」 「あはは。冗談きついぜぇ? ———————。」 板坂は軽口を叩くように言うや否や 「お前が、誰だか知らないがっ! ヤバイのは分かるぜっ!! 先手必勝だっ!」 叫び、相馬に襲いかかる!!? 雷のようにバチバチと放電する板坂に絡みつかれた相馬は、顔色も変えずに言った。 「悪いな。こう来てくれなくては、瞬殺して見せる意味がないから助かる。本気で、殺す気で、来てくれないと意味がない。——さて。大した電撃だが、お前は所詮、俺の識から生まれた化け物に過ぎない。猛毒のコブラに、自分の毒が効かないように、俺の識から生まれたお前の電撃は、俺には通じない。六道丸——」 相馬の声に応え現れた六道丸は、板坂を簡単に両手で捕まえてしまった。 「おいっ! なんだコイツ! 急に現れて——!!?」 そして—— 「おい!? 辞めろっ!?? 何する気だ!?」 と喚く板坂を頭上高く持ち上げた。 そして、大きく口を開くと、そのまま—— 「おいっ! 辞めろ! やめせてくれ!! 逃げれねえっ!! 体がこいつの手に吸い付いたように——」  「既に表面が、癒着し始めてるんだろう? 六道丸は将門の識だが、俺の識も大量に吸収している。謂わば、六胴丸とお前は同じ識だ。力の差があれば、お互いを形作る境界線など、無効に出来る。弱い者は、強い者に吸収される」 「助けてくれ!! 頼むよぉ——ッ!?」 板坂は叫んだ。 懇願する板坂を、六道丸は大蛇の様に大きく開けた口に運び、頭からゆっくりと飲み込んだ。 「……!?」 「……!?」 「……!?」 銀太達3人は、ただそれを見ているしか無かった。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!