18人が本棚に入れています
本棚に追加
「僕のパソコンを使うのは、よくないかもしれない。アクセス元がバレたかもしれないから。カナミ、君のパソコンを貸してくれないか。あさってまで」
ぱっくんは大真面目だ。私は五秒だけ考えて、
「うん分かった」
教室に急いでパソコンを取りに戻った。
「ありがとう」
ぱっくんは、念のため、と言って私が伝えたパスワードでパソコンを開いた。
「何だこれ」
「え?」
「りゅうじがしんじのくちびるにゆ」
「わーっ」
あわててパソコンを奪い、消去、消去、消去した。昨日の晩、中学校生活最後の思い出にと全力を尽くして、BL小説を書いていたのである。何をやっているのだろうか。
「ぱっくん、お願い。見なかったことにしてくれない」
「う、うん」
「ぱっくん、あのさ」
「何」
「開けてはいけないドア、開け過ぎ」
翌日。つまり、卒業式の前日。
ぱっくんは頭をかかえながら、ずっと私のパソコンをいじくっていた。
「どう?」
卒業式の予行練習で隣になったので、聞いてみる。
「どうにもならない」
とだけ、ぱっくんは答えた。
「そうなの……」
私は同情したが、そんなの当たり前ではないか、とも思った。
何をしてるのぱっくん。
最初のコメントを投稿しよう!