18人が本棚に入れています
本棚に追加
ちゃんと、眠れただろうか。
そして私たちは無事、卒業できるのだろうか。
果たして。
ぱっくんは登校してきた。
笑顔で。
しかも、来るなり私をぎゅうっと、抱きしめたのだ。人目もはばからず。
私を含めクラスメイトたちはぎょっとしたが、ぱっくんならではのマナーなのだと気を取り直した。牛乳びんのフタを、爪ではなく先割れスプーンの先で開ける生徒を見かけた時のように。
「カナミ、君は女神だ」
ワードが強い。ぱっくんは、少し興奮していた。
「君は僕の国を救ったんだよ」
「え、ほんとに?」
金魚をすくったみたいに言うではないか。私は返事に困った。
「うん。多分大丈夫だ。カナミ。ありがとう」
と言って、パソコンを返してくる。
「あ……、うん」
「あのさ。先生に返す前に、一回見てくれない、中」
「中? パソコンの中ってこと?」
「うん。電源入れたら、すぐファイルが立ち上がるはずだからさ。見てくれない」
「……うん。分かった」
「じゃ。ありがとう、本当に」
チャイムが鳴ったので、そこで話は終わりになった。
最初のコメントを投稿しよう!