世界を救った少年ぱっくん

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「カナミ。君のパソコンを貸してほしい」  ……まず思ったのは、それはないだろう、ということだった。  放課後の呼び出し。  二人きりの視聴覚室。  そして、今週末には卒業式である。  普通なら、「カナミっ、好きだっ」とか言われて、下手すりゃ押し倒されて事に及ぶ流れでは、ないだろうか。まあ、ぱっくんとは、いやぁ、どうしようかなぁ、と、さっきまで思っていたことは思っていたが。  クニ? 「何それ」 「カナミ、僕は、開けてはいけないドアを開けてしまった」  話の内容よりも、ゥドゥアー、というネイティブチックなぱっくんの発音の方が、気に障った。ぱっくんはやっぱり脳みそが違う。今や〇〇語、●●語、英語、そして日本語も自由自在だ。このままでは天才ハッカーまっしぐらである。 「開けてはいけない、ドアー、とは」 「パソコンをいじっていたら、僕のとなりの国の会議室に入ってしまったんだよ。何だか恐ろしい話をしてた。あさって、国境に爆弾を落とすらしい。開戦の合図に」 「ええっ」  どうパソコンをいじったら、そんな大事な会議に参加できるというのだ。
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