プロローグ

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プロローグ

我々の銀河から10万光年ほど離れた銀河の端にある暗い小惑星の端に数隻の戦闘艦が任務を終えて母星に帰ろうとしていた。戦いに敗れた生物はこの小惑星に基地を設置し資源の回収をしていたが、運悪く敵方に見つかり抵抗むなしく壊滅した。敵方の圧倒的な物量と容赦のない殲滅作戦でほぼ勝敗は決したも同然の状態であった。 小惑星から少し離れたところを周回する衛星の陰に隠れていた2名の生き残りは遮蔽物になっている岩陰から注意深く姿を現した。周囲は岩石が転がり重力もほとんどないため、歩くのではなくスラスターを噴射しながら地面すれすれを飛びながら這うような形で進んだ。 「おい、俺たちの基地のほうが眩しかったがどうだ?」 「すべての通信が途絶えたよ」 真新しい宇宙服を着た大柄の生き物は身を乗り出して小惑星のほうを観察し少しでも希望がないか探しているようだが、古く汚れた宇宙服を着た生物は小脇に抱えている装置を操作しながら希望を捨てるようなしぐさをした。 「そうか・・あいつらお得意の攻撃がここでも実施されたということだな」 「だろうな。俺たちもう戻れなくなっっちまった」 「ああ、基地の残骸に転送装置が残っていたら帰れるがあれじゃ無理だろうな」 大柄の生物はそういうと、観測した基地の残骸の映像を相手に転送し、いくつか拡大したものを強調表示した。小柄の生物は身じろぎしながら体の中心に取り付けていた装置を外し、ポケットから取り出した円柱形のものをいくつか装置に埋め込んだ。 「そういえば、お前はそれをやりに来たんだったな」 「そうだ、俺の任務は終わっていない」 「いくつかのチームでやる予定だっただろ?ほかのやつが見事にやってのけているよ」 「そう願いたいところだが、俺の手元のこれはまだ任務を実行していないんだぜ。やらないとな」 そういって岩場から身を乗り出し周囲を探索し始めた。 この辺りの宙域は銀河の端でもあるため星の分布に偏りがある。小惑星のある方向は漆黒の闇になっておりそこから先はいくつかの銀河が遠くに見えるだけだった。小型の生物は漆黒の闇を一通り確認したのち反対側の明るい夜空の方向を向き踊りのようなうごきをし始め、いくつかの装置を取り出してはすべて同じ方向に向けて装置のボタンを押した。 これを繰り返してからその場に座り込んだ。 「終わったのか?」 「ああ、任務完了だ」 大柄の生物が隣に座り込みながら、装置を受けとり岩石の隙間に投げ入れ始めた。 「これでよし」 「そうだな」 「で、どうするんだ?」 「どうするもないだろう。戻れないなら再開するための準備をするまでさ」 「やはりそれしかないか」 そういって二人はスラスターを噴射し明るい夜空の一点に向けて体を回転させ、二人はそのまま抱き合うでスラスターの出力を最大にした。 彼らの宇宙服はハイパースペースジャンプができるように設計されている。 しかし、彼らが生きて母星に帰ることはない。 ハイパースペースジャンプはできるが宇宙服では中の生物の生命を守り切れないのである。彼らは死を前提に自らを母星に戻し、再開と称するリサイクル処理からの転生をする。 リサイクル処理がうまくいけば体は子供にもどるが記憶は保持したままとなる。体の一部があればリサイクルが可能なため、彼らの文明は高度に発達しほぼ不老不死が可能な領域にまで発達していた。 「俺たちが戻って動き回れるようになるころには戦争終わっているかな?」 「終わっているだろうよ」 「だろうな。お前の任務が成功していたら一発逆転で俺たちの勝利と聞いているが、そうだろ?」 「その予定だ」 「そうか・・楽しみだな」 そう言って彼らはジャンプした。 虚空を突進する物体が大型の船体に接近し外殻にとりついた。 この戦闘艇は艦隊戦用として作られているため小さな物体の接近は無視する。固い外殻のおかげで無視できるというのもあるが、ほぼ自動化されているため生物が乗船していないのがその理由でもある。 外殻にとりついた物体が内部から触手をだし、外殻の隙間から内部へそれをのばしていった。 帰還を急ぐ複数の戦闘艇は何事もなかったかのようにスピードを上げ母星を向かった。
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