0人が本棚に入れています
本棚に追加
1. お別れ
爽籟(そうらい)が吹きかける素晴らしい日の出来事。
私は我が子を産む為に病院に運ばれてきている。
深夜、私が痛みのあまりにベッドから落ちた時、夫の顔はそれはもうこの世の終わりかのように青ざめていて、滑稽で、愛おしく感じた。
今私は病室の中にいる。手を握って欲しいと隣の助産師に頼んだら力一杯握り返してくれた。呼吸の仕方を繰り返しながら、私は身体中の神経を一点に集中させてみる。
私の顔は力んだせいで皺くちゃになり、汗も滝のように流しながら痛みに耐えた。
その時私は初めて夫と出会った頃を思い出していた。今も待合室で胸を高鳴らせて待っている夫とは沢山の思い出をこれまで一緒に作り上げた。
今この時も大切な思い出の一つとなるだろう。
最初のコメントを投稿しよう!