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初めて夫と会ったのは図書館だった。
私が資料を借りた後図書室を出て歩いていると後ろから誰かが呼び止めた。ペンをテーブルに忘れてたそうだ。このペンで大学受験に挑み、合格し、仕事の面接でも使ったペン。そんな訳で私の中では特別なペンだ。
振り返るとそこには私と同じぐらいの歳の、清潔感のある男性がいた。
その人と何に惹かれたのかはよく分からないが、心の奥が暖かくなった。
生まれて初めての一目惚れだった。
私はぎこちない仕草でペンを貰って去ろうとした矢先、
「一ノ瀬さんですか?」とその男性に呼び止められた。
「すみませんいきなり。私、同じ会社の一ノ瀬広樹って言います。」
「同じ苗字だったんで覚えちゃったんです。」
「あ、変でしたよね。すみません。」
と恥ずかしがりながら次々と付け足していく彼を見たら、可愛らしくて緊張感が解けた。
「名前覚えてくれて嬉しいです。これからもよろしくお願いします一ノ瀬さん。」と言い私は微笑んだ。
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