1. お別れ

5/5
前へ
/5ページ
次へ
私は何が起こっているかまだ思考が回らない頭で頑張って考えた。 壁、壁、壁!!!! 私の息子を壁の中に連れ込もうとしているのだ!!! 私はがむしゃらに叫んだ。 「待って!!!せめて少しでも触れさせて・・!!!」 代表の医師は仕方がないと言った表情をし、急いでいるのを表すかのように無言で息子を私に渡した。 私は咄嗟に自分の着けていたネックレスを外して、この世の物とは思えないほど愛おしく小さな手に持たせた。 そしてお別れのキスをおでこにする。 お別れ。 お別れ。 。。。 こんなことは想定内に入れていない。 可能性としてあったが、今まで、ここで産むまでその可能性を心から否定していた。 息子を渡すと医師は合図を出し、他のメンバー達と走り去っていった。 隣に助産師だけが残った。 悲しみを分かち合うように私の背中に手を添えたが、私は床に崩れ落ちて泣いてしまった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加