蒼剣のジュド

1/4
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/76ページ

蒼剣のジュド

ニュークラント平原を望む台地には今宵無数の明かりが灯り、独特のピリピリ とした空気が漂っている。 それはそうだろう。明日は日の出とともに、向こう側のナグ・シン第三王朝との戦いが始まるのだから。 まあ、勝者が第三王朝(あちら)だろうがトーユルク帝国(こちら)だろうが、自分には本質的には、と傭兵であるユタクは大欠伸をした。 腰に昔戦場の死体から剥ぎ取った剣を佩き、寝る前にぶらっと陣の中をそぞろ歩く。戦の前にする癖だった。顔ぶれを見て明日の吉凶を占うのだ。 勝敗はどうでもよくても命は可愛い。 「お、今度もいやがる」 風見鶏みたいに勝つ側につくのが鉄則の傭兵の中で、いつもトーユルク帝国から出陣する奴を一人知っている。もう何度も敵・味方になって戦った。毎度彼を探すのがほんの少し楽しみになりつつある。 それは奴が味方の時は勝ち戦であることが多い、という意味においても。 「やっぱあんただったんだな、蒼剣のジュド」 呼ばれた男が焚火からわずかに顔を上げてこちらを見る。 時が止まったような瞳。螺子(ねじ)がさび付いてとまっちまった時計みたいだ。 けれどその奥で熾火のように燃え続ける意志。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!