6.決着

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6.決着

「オイ、コイツらに盗んだモンを運び出させろ」 「わ、分かった。お前達、を持って来るんだ」 「父ちゃん……」 「いいから、早くするんだ!」  男が怒鳴ると、最初の少年を筆頭に、一斉に子ども達がアジトに姿を消した。それから、程なくズルズルと引きずる音がして、少年達が平たい楕円形のものと千切れた布切れを幾つか抱えて来た。どちらも泥と汚れで茶色く染まり、見る影もない。 「テメェら、よぉく見ておくんだぜ」  俺は子ども達の顔を一通り睨めつけると、ヤツらの父親の身体を地面に引き倒し、上から体重をかけて押さえつけ――剥き出しになった喉笛を、短剣で一息に引き裂いた。 「アグ……ガフッ!」  口から赤い泡を吹いて、男は事切れた。白眼を剥いた顔を子ども達に向けたまま、芝生の上に転がる身体がビクビクと痙攣している。 「父ちゃあんっ!! よくも……」 「来んなっ! 近寄るヤツは、()る。ガキだからって、容赦しねぇぞ!」  最初に顔を出した少年は、怒りに任せて飛び掛かろうとしたものの、俺の剣幕に固まった。そして、他の子ども達を背中に庇うように一歩だけ前に出た。 「テメェら、母親は居るのか?」  少年は、俺を睨んだまま首を振る。他の子ども達はきょうだいと抱き合い、震えながらボロボロ泣いている。 「それじゃあ、このままここを出て行け。そして、二度と戻って来んな。朝になっても残っているヤツは、バラバラに引き裂いてやる」  ギラリと牙を剥くと、甲高い悲鳴が短く上がる。 「どうして……僕らを見逃すんだ……?」  恐怖と怒りを湛えた眼差しが、真っ直ぐ俺に向けられる。  ケッ、と呟いて、彼を見据える。視線が交わるが、決して逸らさない。悪くねぇ、いい度胸じゃねぇか。 「フン……寄る辺のねぇ弱いモンは、覚悟を持って生きていくしかねぇんだ」  姫様に出会う前の俺がそうだった。盗み、奪い、殺し……なんでもやった。自分が生きるために。でも今は違う。この手を汚す理由は、ただひとつ。 「だがな、この城ん中のモンに手ぇ付けたら、俺が許さねぇ。覚えとけっ!」  フゥーッと背中を逆立てて、身体を膨らませる。生臭い息で低く唸り声を上げれば、彼らはビクリと身震いした後、弾かれたように逃げ出した。月明かりが満ちた中庭で、小さな小さな黒い影達が、慌てふためきながら城壁の割れ目に頭を突っ込み、尻尾を巻いて出て行った。  灰色の骸1つと奪い返した紛失物を並べたまま、俺はレンガの欠片を引きずって行き、アジトの出入口を塞いだ。城壁に空いた隙間は、追って修繕を促さねばならないだろう。
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