7.忠誠の証

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7.忠誠の証

「ちょっと、ママ、来て! なんか廊下が汚れてる!」  翌朝。姫様が、死闘の痕跡に驚きの声を上げた。 「こっちもよ。嫌だわ、気持ち悪い。あちこちに動物の毛が落ちてるわ」  姫様の母上が、勝手口の前の廊下で顔をしかめている。2階から下りてきた姫様も合流し、一緒に床に散らばった盗っ人の体毛を眺めた。 「ナイトの毛とは、色が違うよね。ママ、掃除するなら、ゴム手袋嵌めた方がいいんじゃない?」 「そうねぇ」  母上は浴場に消える。  さて、そろそろ俺の出番だ。昨夜の功績を目の当たりにしたら、姫様も、俺の忠誠心の厚さに感動するに違いねぇ。 「おおーい、姫様ぁー!」 「あ、ナイトだわ! ちょっと! あんた、夜中に廊下でなんかやったでしょ!?」  パタパタと足音が近付いてくる。俺は急ぎ、玄関に隠してあった犯人の亡骸と、取り戻した品々を引きずって……彼女の足元に捧げた。 「そうなんです、見てくださいよ! ようやく盗っ人をとっ捕まえたんですぜ! それから、ホラ! 盗まれた姫様のマフラーと、クッションと……」 「キャーッ!! ママぁ! ナイトが大っきなネズミ持ってきたー!!」  彼女は数歩後退り、水色のゴム手袋を嵌めて現れた母上の腕に縋りついた。 「あら。これ、無くなったクッションじゃない? 犯人を捕まえたから、あんたに見せに来たのねぇ、麻里(まり)」  流石、ご明察恐れ入る。母上は目を細めて俺を見下ろすと、ふくよかな頰を緩めてくださった。 「どーすんのよ、これぇー! もおぉ、バカ猫ぉーっ!」  一方、姫様は頰を真っ赤に染め、大きな瞳は感涙に潤んでいる。ハイトーンの興奮した声は、歓喜に満ちて……いや、違えな。モフモフだったマフラーが汚れちまったことが、お気に召さなかったか。俺が示す忠誠心をご理解いただくってぇのは、なかなかに難しいもんだぜ。 【了】
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