凍結

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凍結

高校を卒業して進学してからも佳奈と私は付き合っていた。 秋葉は高校の時の1番目の彼女とは別れたが、すぐに別の女がまた1番目の彼女になった。 2番目の佳奈が1番に格上げされる事は無く、その事で佳奈は酷く落ち込んでいた。 私と佳奈はパッと見はタイプが違ったがたぶん根っこの部分は近かったのだと今になって思う… 佳奈が盲目的に秋葉に没頭するように、 当時の私も盲目的に佳奈に惹かれていた。 彼女とは既に身体の関係はあったが、佳奈の心には秋葉しかいなかった。 境遇や性格が似ているが故、佳奈の気持ちは痛いほどわかった。 佳奈はそんな中、ある事がきっかけで心を病んでしまった… 佳奈は深酒を繰り返す様になり 泥酔して名前も知らないような男と寝てしまう事も一度や二度ではなかった。 そして、その事が更に彼女自身を苦しめる悪循環に陥っていた。 佳奈は気分が落ち込むと深酒と共にオーバードーズをする様になり、度々私に助けを求めてくるようになっていた。 その日もまた深夜に電話がきた。 「イチーまーたーやっちゃーたきーて」 と呂律のまわらない佳奈の声がする 佳奈とは最近顔を合わせていなかった。既に限界を超えていた。  その時、私の中にあった張り詰めた何かが切れた… 私は酒を煽るとそのままベッドに戻り眠ってしまった。 明け方に目が覚めた、電話をかけたが佳奈は出なかった。 冷静になった私は慌てて佳奈のマンションに向かった。 部屋の鍵はかかっていなかった。 「佳奈?」 ダイニングのテーブルの上にはビールや酎ハイの缶、薬の空容器やら冷凍食品が散乱していた。 寝室にも、リビングにも彼女はいなかった。トイレと風呂にもいない。  外に出たのか… 舌打ちして再び佳奈に電話をかけた。 佳奈のスマホの呼び出し音が室内で響く 業務用の小型冷凍庫が目に入った。  嫌な予感がした… 彼女は料理はせずに、もっぱら冷凍食品を使っていた。 恐る恐る上開きの冷凍庫を開けると彼女はそこにいた。 幅60センチほどの程の冷凍庫の中で 体育座りの姿勢でスマホを握りしめて… 彼女は私を信じて冷凍庫で待っていた もし私がこなかったら死ぬつもりで… 私はいつのまにか彼女の生きる支えになっていたのに、それに気付かず最後の最後で彼女の手を離してしまった。 私はずっと求めていた物を永遠に失ってしまった… しかし同時に、そう思いこみたい自分がいる事も知っていた。 お前はこうなる事を本当に予期出来なかったのか? 否、心の何処かでいつかは、こんな結果になる事はわかっていたはずだった。 私はただの嘘つきで偽善者だった。
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