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昔々
昔々、とある島に女が住んでいた。
女には夫と小さな子供がいた。
漁師の夫は働きもので、貧しいながらも
幸せな生活を送っていた。
ある嵐の夜、夫は今まで見たこともない魚を釣ってきた。
その日、漁に出たはいいが天気の急変により海が荒れてしまい、ほうほうの体で夫は帰ってきた。
その日の収穫はその魚だけだったので家族はその魚をゆうげの材料にする事にした。
気味の悪い見た目だったが、その魚はえもいわれぬ美味しさだった。
家族は囲炉裏を囲み魚を平らげると、床についた。
それから何日かして、一家の姿が見えない事を心配した村人達が家を訪れた際、布団に寝かされた夫と子供を発見した。
2人は明らかに死んでいるのに、妻である女は数日前から病気で寝ているだけだと言い張った。
夏の真盛りで暑い時期だったにも関わらず遺体は全く腐敗していなかった。
村人達は不審に思ったが、女の話もあり病気で何日か寝込んだ後に息を引き取ったのだろうという事で納得した。
女は最後まで夫と子供が死んでいる事を認めなかった。
女の言動がおかしいと感じた村人達は、きっとショックで気が触れてしまったのだろうと思った。
村人達は半ば強引に、女の反対を押し切ると村の慣習に従って夫と子供の遺体を海に水葬した。
女はいつのまにか村から姿を消した。
それ以後、女の消息を知る者はいない。
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