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「おらぁ。調子はどうだーい?」
MCだろうか。バスケットマンがよく着るようなタンクトップにバスパン。靴は高級スポーツメーカーの金色のごってごてのやつーーを履いた坊主の男性が場を盛り上げる。客席では「元気ー!」とか、「病んでマース」とかいろんな反応が出ている。
「そうかいそうかい。じゃあ、今日はとことん暴れてやんなー。まずは、佐波人。いってみよう!」
ズンズンズンと、低音のリズムが放たれる。フロアの客はきゃぁぁっと歓声をあげて(特に女子)。男たちも「おお!」と拳を突き上げたり、口笛を吹いたりして彼が現れるのを待っている。
俺は壁際の場所でぼーっとステージを眺めていた。その瞬間、ぐっと肩を掴まれる。後ろを振り向けば、銀、銀、銀。伏黒佐波人と目が合った。マイクを手にして、俺を見つめる。目を細めて笑ったかと思ったら、伏黒佐波人を中心に客が円を作る。
「佐波人ー!」
さっきの3人組の女の子たちが騒いでいるのが聞こえる。ズンズンズン、とリズムが。伏黒佐波人は俺から離れると、その円の中心に立った。
「Hey,bae(俺のかわいこちゃん)
I Show you something you have never see(これからお前がまだ見たことないもの見せてやるよ)」
「Don't look away(目ぇ、そらすなよ)」
俺の目を見据えて、客に語りかける。伏黒佐波人は照らされた光の中で輝いて見えた。それが、憎らしい。
挑発するような目線で客を舐めるように見つめる。
「I’ll explain your tiny life(お前のちっぽけな人生を説明してやるよ)」
客がざわめく。俺はステージに向かって優雅に歩いていく伏黒佐波人に釘付けになる。
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