銀は眩しいから

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「まずは腹ごしらえから。これ、食っていいよ」  ベッドに倒れ込んだ彼が俺に何かを投げ渡す。食い物は投げちゃダメだろ。そんな指摘も俺にはできない。そんないい大人ではないから。手の中には、プロテインバーと思しきものがあった。彼はよほどお腹が空いていたのか包みをびりびりと破いて、長方形のものに齧り付く。がりがりがりと聞こえる彼の咀嚼音。俺も腹は減っている。飯も食わずに来たんだから。こいつから贈られるものにはなるべく手をつけたくないが、食べ物には罪はない。俺も黙ってプロテインバーを食べることにした。 「真嶋サーン。食べてるとこ悪いけど、ね」  俺がかじっていたプロテインバーを横取りされる。彼はそれを備え付けのデスクの上に投げ捨てると、俺のネクタイに手をかけた。 「じゃあ、ヤろっか」  彼の瞳の奥に鈍い光が走る。この目に見つめられると、俺は全く抵抗できない。もう、抵抗するのはやめた。彼には力ではかなわないと知っているから。強者には頭を垂れて従うのが1番の手だと知ってしまったから。俺は彼にされるがままにされて、ワイシャツを脱がされる。そうして彼も着ていた空色のベストと襟付きの白いシャツを脱いだ。  彼の均整の取れた身体が露になる。割れた腹筋と、浮き出た肩甲骨。モデル体型の彼だ。どんな服でも着こなせてしまうだろう。加えてこの顔。二重で瞳が大きくて、鼻筋がすっと通っている。唇は花弁のように薄く、横に引かれている。顔の輪郭は綺麗で、喉仏がはっきりと浮かび上がっている。 「……しょっぱい」  ぺろ、と彼が俺の首筋を舐めてくる。ざらざらとした舌が這うのははっきりいっていい気分じゃない。この行為はもう何度目かもわからないから、頭が考えることを放棄している。
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