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俺は観念して口を開く。
「妻が初めてだ」
「ぷっ……くはは」
彼はどっと笑う。笑った拍子に彼のものが俺の体内からずるりと抜けた。俺はほっとして身体の力を抜く。
「まーじか。結婚したの30の時だって言ってたろ。30歳まで童貞貫くとか……つまんねえ人生だな。健気に思えてきたわ」
俺は彼からの侮辱に耐える。こんなことはもう当たり前だ。俺は妻に全てを捧げているつもりだ。それが、こんなふうになってしまったのには理由がある。この男ーー伏黒 佐波人に出会ってしまったからだ。
「あー、わり。もう1回蓋しなきゃ、な」
弛緩していた身体の内側が軋む。彼が再び入ってきたから。先程よりも熱く滾っているのがわかる。
「っ……はぁ。真嶋さんの中まじでいい」
目を細めながら彼が微睡む。しかし、腰は動かしたまま。
「……全部受け止めろよ」
ワントーン上がった声が耳の後ろで跳ねた。びく、と彼の身体が震える。その直後、腰を強く掴まれて尻に彼の怒張を押し付けられる。どく、どく、どく。彼のものから何かが出ているのが伝わってくる。男なら嫌というほど見てきたもの。彼は、「はぁー」と大きく伸びをすると俺の中からようやく出ていった。腰には彼の手跡が赤く残っている。くっきりと、浮かび上がるように。
「可哀想だから今日はこれで帰してやるよ」
ベッドに横になっている俺の頬に軽く口付けを落として、彼は服を着た。
「真嶋さん……あいちてゆ」
ぺろ、と俺の鼻のてっぺんを舐めたあとで彼が言った。馬鹿げた台詞に背筋が凍る。赤ちゃんみたいな言葉を使うな……。不釣り合いのはずなのに、彼にはそんなふざけた言葉が似合うときがある。顔が良ければ何を言っても様になるし、個性と捉えられる。それを妬んでいるのは自分の方だ。俺は目立たないように、指さされないように生きてきたから。そんなありのままの彼でも許してくれる世界が羨ましくてしょうがないのだ。
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