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怪しいと思われただろうか。
変に近寄ると怪しい人と思われるだろうか。
やめておこう、か。
と、女性に背中を向け、帰ろうと思った。
「…………。」
数歩、歩いた所で女性のことがやっぱり気になって、また女性に声を掛けた。
「あの。」
振り返り、
「なんですか?」
と今度は普通に聞いてきた。
「猫、可愛いですね。」とニコッとした。
「この辺、沢山猫いますよ?」
猫の頭を触りながら、言った。
「そうなんですか……。」
「本当はこの子たち、家で飼いたいんですけど」
沈んだ顔をしたから、どうしたんだろう?と思って聞いてみた。
「飼ったらだめとかなんですか?」
「あ、いえ。別に、気にしないで下さい。」
すみません、と私は小声で言い、その後私たちは黙っていた。
「あの、これ良かったら食べてください!」
鞄から今日買ったパンを取り、女性に渡した。
「えっ? いいんですか?」
「ここのパン屋、美味しいんで一回食べてみて下さい。」
「ありがとう。」
パンを渡すと、女性の顔色が戻って良かった。
「じゃあ、私帰ります。」
それじゃあ、と手を振り、女性も私の真似をして手を振った。
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