0-1 邂逅

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0-1 邂逅

 ようやく砂漠を抜けて、女は一人、馬の背に揺られていた。  雲一つない夜空に満月が輝き、孤影を照らしている。フードを下ろした女の長い髪は月光を青白く弾いて、地面に黒い影が落ちる。  前方に巨石を組んだ環状列石(ストーン・サークル)を見つけ、女は目を瞠る。――人が、いるのか。  疲労の限界にある身体を叱咤して、その石組みに向けて、馬を進める。  巨大な家ほどもあろうかという、組石(トリリトン)を見上げ、女は息を飲む。だがその石は粗削りで、遥か太古からこの地にあるように思われた。  遺跡――?  もう、ここには、この巨石の建造物を作った人々はいないのか。  ならば――。  万事休すだ。女は思う。  これ以上、進むことも、砂漠を再び横切って、戻ることもできない。  哀し気に(いなな)く愛馬の首筋を撫でて、女は馬から下りる。馬に騎りづめだった脚は棒のようで、がくがくと震えがくる。それでも、女は馬の手綱を曳いて、その石組みの門をくぐり、(サークル)の中に足を踏み入れた。
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