0-1 邂逅

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 青白い月の光に、巨石群が白く輝く。環状列石の中央を見て、女は思わず目を見開いた。チロチロと、涼やかな音が耳に入ってきて、心が躍る。――水だ。泉が、あるのだ。  つい、足が速くなるのを必死に堪えて、ゆっくりと泉に近づく。石造りの水盤に、水があふれ出て、やはり石造りの、小さな池に溜められ、その後はどこに続いているのか。女は愛馬に水を飲ませながら、自身も貪るように水を飲んだ。冷たい水が喉を潤せば、死んだと思っていた命が、再び蘇える気がした。  一通り喉を潤すと、女は泉の端に腰を下ろす。  水は希望か。それとも絶望か。  そもそも、あのような男の甘言に惑わされた自分が愚かだったのだ。  とうに、自分とあの男の仲は破綻しているのに。それなのに、どこかであの男を信頼したいと思っていたのだろう。  ――その結果が、これだ。  初めから、計画通りだったに違いない。あるいは、もっと確実に殺すつもりだったのかもしれないが――。  女は月を見上げ、溜息をつく。自分と、あの男の愚かさに。そして、関わった者たちすべてに。
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