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そしてアルベラは、たぶん、イライラするくらい初心で鈍かった。……恋に恋することすら知らない、子供っぽい娘。物知らずで弱っちくて、全てにおいて認識が甘くて、何の力もないくせに、自分は一人で歩いていけると思い込んでいた、馬鹿な小娘。それだけの努力をしたと、本人は胸を張っていたけど、アンタが一人で生きていけるわけねーだろって、ついついデコピンでもかましたくなる、甘えたお嬢ちゃん。
でもそんな、とんでもなく危ういところから、目が離せなかった。それはきっと、ゾラだけじゃなくて、テセウスも、シメオンも、同じ。
ゾラが目を閉じ、さっきまでの情事の余韻に浸る。
ほっそりとして、それでいてしなやかな、森の小鹿みたいに敏捷で。どこもかしこも綺麗で、触れるのが恐ろしいくらい、清らかで。堪えきれずに上げた喘ぎ声も愛らしくて。
あんないい女の側で、十五年もお預け喰らって、テセウスって野郎は正真正銘の馬鹿だと思う。
そんな風に死ぬ気で守ったお姫様の処女を、俺みたいなクズ男に掻っ攫われて、今頃草葉の陰で歯噛みして悔しがっているに違いない。
ああ、それでも!
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