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14-14 アルベラの未来
アルベラが目を覚ましたのは、日も高くなってから――。
細い窓から光が差し込む部屋で、アルベラは眩しさに目を細める。
身体がギシギシして、とくに脚の付け根が痛い。顔を顰めながら起き上ると、一糸まとわぬ肌のあちこちに、赤い鬱血痕が散っている。――昨夜の記憶が蘇って、アルベラは真っ赤になってシーツをかき寄せる。枕元にはテセウスの短剣が置いてあった。
「目を覚ましたの! アルベラ!」
聞きなれた、そして懐かしい声がして、アルベラは声をのする方に目を向ける。ちょうど、枯草色の髪に白い布を巻いた少年が、水差しと盥を抱えて入ってきたところだった。
「……シリル……」
「アルベラ……」
走り寄ってきたシリルの、ハシバミ色の両目がみるみる潤んで、滂沱たる涙が溢れ出す。
「アルベラ、俺、もう絶対、アルベラの側を離れないから。アルベラがこの先どうなろうが、誰と結婚しようが、ウルサイ、邪魔だどけ、って言われても、絶対、絶対、ついていくから!」
「……何の話よ……」
薬の後遺症か、まだ頭が痛い。昨夜のあれはゾラ?……それとも、テセウス? 自分はこの後、いったいどうなるのかと――。
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