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その言葉にアルベラもはっとした。〈王気〉があると言うことは、龍種で、女王の資格があるということだ。だが、そもそもはアデライードが結界を修復したから、アルベラに〈王気〉が出現したわけだが――。
「アルベラ、お腹空いただろ? あ、風呂に入りたい? この部屋はさ、設備がちょっと古くて、お風呂の支度は時間かかるんだよね」
「お風呂、入りたい。でも、準備が必要なら、後でもいいわ」
「そう、じゃあ、準備してくる。ちょっと待ってて!」
シリルはアルベラに絹のガウンを着せると、部屋を走り出て行く。次に戻ってきたとき、パンとスープ、それから果物の乗った盆を抱えてきた。
「お風呂の準備ができるまで、これ、食べてて」
「ありがとう」
昨日の昼過ぎ、シメオンから渡された葡萄酒を飲んで以来だ。――ああ、でもゾラには水をもらったな、と思い出す。空腹だったけれど、食欲はない。でも、こういう時こそ食べなければ、と出された食事を根性で完食すると、ノックの音がして、長い金髪を後ろで一本に編んだ、美貌の男が入ってきた。
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