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「アルベラ姫。初めて御意を得ます。……陰陽宮の枢機卿をしております、メイローズと申します」
「あ、……アルベラ、です。初めまして」
言われてみれば、男は年齢不詳で声が妙に甲高い。これが宦官なのだ、とアルベラは納得した。
「お体の加減はいかかでしょうか」
メイローズと名乗った男は寝台の脇に片膝をつき、紺碧の瞳をまっすぐに向ける。
「えっと、その……」
「脈を取らせていただいても?」
するりと自然に細い手首を取られ、そこに指を当てられる。
「お熱などもないようですね。入浴を済まされましたころに、また参ります」
メイローズはシリルにいくつか注意を与え、優雅に一礼して去って行く。それを見送るシリルの立ち居振る舞いも、以前とは大違いに洗練されていた。
「……なんか、すごい人ね」
「あ? ああ、優しいけど、厳しいんだ。普段の態度も、全部、一から直されたよ。……言葉遣いも、本当はこんな風には喋っちゃダメなんだけど、急に俺が丁寧に喋ったら、アルベラも気持ち悪いかと思って」
「……想像もつかないわ」
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