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「うん。そうそう、シウリンは皇帝になっちゃったから、御名をお呼びしてはいけないんだって。陛下とか、宦官は万歳爺って呼ぶよ。アデライード姫のことは娘娘って呼ばなきゃいけないんだ」
「何それ! 変な呼び方!」
アルベラはシリルに髪を梳かされながら、心配そうに尋ねた。
「……苛められたりは、してない?」
シリルは、卓上の鏡の中の、アルベラに目を合わせるようにして、言った。
「……アデライード姫は、俺、正直言えば何考えているかわからないって思うけど、意地悪じゃあないよ。俺がアルベラに仕えていたことももちろん知っているけど、何も言わない。……最初ね、アデライードの周囲の侍女たちは俺のこと無視したけど、あの姫様だけは普通に接してくれて……今では、侍女たちとも上手くやってるよ。アルベラが、赦して欲しいって言ったら、赦してくれるんじゃないかな。だからこそ――安易な気持ちで謝るべきじゃないのかも、しれない」
アルベラは鏡の中で微笑んで、シリルに言った。
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